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結党100周年を迎えた中国 世界は・・・


2021.7.17

坂東賢治 氏

毎日新聞論説室専門編集委員

1981年入社。政治部、外信部を経て香港支局長。中国総局長(北京)、ニューヨーク支局長、北米総局長(ワシントン)を歴任し、現在は論説室専門編集委員。中国政治や米中関係などをウオッチし、コラム木語や余録を執筆している。

 

中国共産党との縁

今年は中国共産党100年ということで、7月1日には天安門広場の前で、大層な儀式が行われました。日本と中国は地理的に近く、歴史的にも長い付き合いがあり、中国共産党とも、深い縁があります。かつて、新聞の連載小説は最有力コンテンツであり、各新聞社が有望な作家を囲い込むということをしていました。芥川龍之介も20代のころ、大阪毎日新聞の社員でした。その芥川が今から100年前、1921年(大正10年)に、毎日新聞全面協力のもと中国に取材旅行に行きました。上海から江南、北京などを、知識人を訪ねながら回り、その記録はその年の秋に『上海遊記』として新聞で連載され、のちに書籍化されました。その旅行中、彼は李漢俊の自宅も訪れました。李漢俊の兄は当時の政権の大臣まで務めた人物で、清朝の末期のころ、積極的に日本に留学生を送り、1900年前後には、1万人ぐらいの中国人留学生が東京にいたと言われています。

李漢俊自身も14歳で東京の暁星中学、暁星高校に留学し、東大法学部に進みました。日本語が流暢であり、芥川は彼について「論理立てて話すことにおいては、私より上かもしれん」と言っています。その李漢俊は、日本で社会主義や共産主義の考え方に出会いました。今では過去の思想のように思えるかもしれませんが、ロシア革命が起きたばかりだった100年前は最先端の思想だったのです。

日本はちょうど、大正デモクラシーの時期であり、日本で最初に訳された『共産党宣言』をさらに中国語に訳したものが、中国人が最初に読んだ『共産党宣言』です。当時の中国は、最先端の思想や学術の多くを、日本経由で取り入れていたので、中国共産党の基になる考えも、日本経由で入りました。そもそも国名の「人民共和国」という部分は日本が訳したものであり「共産」「無産階級」「無産」などの言葉も同様に、当時の中国は日本を通じて多くのものを受容したのです。

1921年の第1回党大会は、李漢俊の自宅の応接間で開かれ、参加者は13人でした。芥川の旅行記でも応接間について触れており、同じ部屋だろうと言われています。李漢俊の自宅は上海のまんなか、旧フランス租界にあり、石庫門という欧風のレンガ積みと中国様式を組み合わせたような家でした。今も当時のまま残っており、中国共産党の聖地となっています。中国共産党は、初めは合法的な組織ではなく、党大会のときもフランスの警察が目を光らせていました。そこで、最終日には急遽、浙江省の湖に浮かぶ船の上で会議を開いたという逸話もあり、その船も今、中国人に人気の観光スポットになっています。

初代の総書記に選ばれた陳独秀は、成城高校に留学経験があり、この陳独秀と話し合って共産党を作った李大釗は、早稲田を出ています。第1回の党大会に出席した13人のうち、5人は日本に留学経験があったそうです。また、陳独秀が始めた雑誌『新青年』に寄稿していた魯迅は、現在の東北大学医学部に留学していました。周恩来も早稲田で学び、当時、川上肇の『貧乏物語』を読んで社会主義の志向を強くしたそうです。

毛沢東も第1回党大会に出席していましたが、当時は、それほど知られた人間ではありませんでした。彼は、熊本の宮崎滔天の演説に感動し、宮崎滔天宛てに書いた手紙は、今も残っています。また、文化大革命のときに作った「人民公社」は失敗に終わりましたが、それを作ろうとしたきっかけは、武者小路実篤の『新しき村』だという説があります。これらのことからも、100年前は日本と中国の関係が深かったことがわかります。

一方で、歴史的なことを見ると、当時、中国がナショナリズムを燃やした理由には、ロシア革命と、第一次大戦に勝った日本が出した「対華21カ条の要求」があります。これは日本が力を背景に中国に押し付けたようなもので、怒った中国の学生たちが日本製品のボイコットなどをしました。そのなかで五四運動などが起きたので、中国共産党ができた背景には、ロシア革命や抗日運動が密接に関わっていたと言えます。

 

毛沢東から鄧小平

110年前、中国は辛亥革命を起こしましたが、国民党の統一政権はなかなかできずにいました。そのようななか、優秀な若者たちが共産党に流れ、南にある江西省、瑞金に革命の本拠地を置いて活動していました。しかし、国民党政権に追われることとなり、交戦しながら北の沿岸に向かって約1万km以上を歩いて逃げました。これは長征と呼ばれ、今となっては、中国共産党の復活への道のりとして宣伝されています。その長征の過程で、それまであまり権力のなかった毛沢東が権力を握るようになりました。

毛沢東は中国の歴史の中で生まれた英雄です。中国の歴史は革命の歴史であり、大帝国を築くと農民のなかから反乱を起こす者が現れ、その人間が次の皇帝になるということの繰り返しでした。毛沢東は軍事的な才能に優れ、長期的な戦略を考え、少人数から始まった共産党をかなり強い組織にしていきました。

1945年、ついに国民党との闘いに勝ち、中華人民共和国が誕生しました。毛沢東は選挙ではなく戦争に勝って権力を得ましたが、政策では失敗もし、大躍進政策では欧州を目標に無理をした結果、農村が疲弊し、何千万人を餓死させました。しかし、文化大革命を通じて権力を強化し、原爆や水爆など核兵器も作りました。今の北朝鮮とよく似た構造です。その後、なかなか民生がよくならず、次第に権力が失われていきました。

1976年に毛沢東と周恩来が亡くなると、鄧小平が権力を握るようになりました。鄧小平は文化大革命の間、失脚しましたが、かつて軍の政治委員などをやっていた関係で、軍を背景に復活しました。そして、日本で新幹線に乗ったり、景気の様子を見聞きしたりするうち、中国をこのような国にしたいと考え、改革開放政策を始めました。彼にとって良かったのは、毛沢東時代の1972年、田中角栄氏が訪中し、日本との国交が正常化していたことです。さらに1979年には米国とも国交を正常化し、2大経済大国と良い外交関係を持ちつつ、改革開放を行いました。

現在では「社会主義市場経済」と言っていますが、40年前は「市場」という言葉を使うだけで責められる時代でした。しかし少しずつ、資本主義的なほうへ舵を切りながら改革を進めました。日本もODAを供与し始め、多くの企業が中国に進出しました。この改革開放路線はしばらく続き、鄧小平のあとを継いだ江沢民と胡錦涛は、鄧小平が決めた大きな路線に沿って「鄧小平のやり方」を守りました。

 

経済大国化する、人口14億人の国

その後、2001年には世界貿易機関(WTO)に加入し、2010年には日本を抜いて世界第2位の経済大国となりました。冷戦後、経済がグローバル化していく時期にWTOに加入したことは、中国が波に乗る1つの大きなきっかけとなり「世界の工場」と言われるようになりました。ここ10年ほどは身の回りにあるものが中国製品ばかりですが、これは日本だけではなく、世界中で起きていることです。

EU、米国、日本など、すべての先進国を合わせた人口は約14億人ですが、中国は中国だけで14億人です。私が取材を始めたころ、中国の1人当たりのGDPは約300ドルで、同時期の日本は約1万5,000ドルでしたが、今、中国は、上海からチベットまで合わせた平均が約1万ドルまで上がってきています。中国は地域格差が大きいので、おそらく上海や北京では日本を上回っているところもあるでしょう。ソ連崩壊後の国際社会で起きた一番大きな変化は、中国が経済大国化したことだと思います。そして広い国土と14億人を守り維持するため、まだまだ進んでいくでしょう。それが世界を揺らしてきています。

 

伝統回帰、皇帝制

習近平体制はある意味、権力が集中しています。これを中国は、共産党的な権力集中ではなく、皇帝制のようで、中国の歴史的伝統に合っているなどと言い出しました。中国の皇帝制が完成したのは宋の時代、今から約1000年前のことです。それ以前は群雄割拠の時代でしたが、それを秦の始皇帝が統一しました。皇帝の下に親族などを特別な存在としておき、その下に官僚組織があるという形を経て、宋以降の中国では、皇帝が絶対権力を持ち、下の官僚たちは皆平等というようになりました。それは皇帝を中心にした、安定した社会でした。

われわれは、民主主義国家が一番安定だろうと考えていますが、中国は伝統回帰などと言い出し、米国や日本は「何を根拠に言っているのか」と批判しています。われわれは、中国の経済が発展すれば、いずれは民主主義国家になるだろうという、漠然とした期待を持ち、中国を応援してきた一面があります。しかし、習近平体制はその方向に進んでいないようです。また、権力集中を貫けば、潰れていくだろうという期待もありましたが、簡単に潰れる気配もなく、むしろ発展しています。そこがソビエト、ロシアと違うところです。

 

独裁体制のガラパゴス大陸

ソビエトの社会主義体制は、経済面で米国や日本に負けてしまいましたが、中国の「国家資本主義」は特殊で、独裁体制である以外は資本主義と同じです。さらに、科学技術や人工知能、5Gなど、最先端の分野を共産党主導でどんどん進めています。コロナもスマホアプリの力で抑え込みました。日本にもCOCOAという接触確認アプリがありますが、入れていない人も多いですね。中国では感染が拡大する初期のころに、IT企業がすぐにアプリを開発し、入れないと生活できません。コロナの人と接触して赤色になったら外に出られず、黄色は外出制限がかかります。一方で、100万人単位で検査を行い、陽性の人を徹底的に隔離しました。これは民主主義社会ではできないやり方で、独裁体制だからできたのです。

最近は、米国も復活してきていますが、経済の回復が一番早かったのは中国です。そのため、中国向けの輸出が増え、日本企業も相当助けられました。このことは「独裁体制はいずれ潰れるだろう」、「経済が発展すれば民主主義に変わるだろう」という漠然とした期待を裏切って、中国が大国化している現実です。

中国の国家資本主義の基幹の1つは国有企業です。中国には、世界の上位500社に入る企業が100社ほどあり、そのほとんどが国有企業です。いろいろなコングロマリットを作っている企業が多く、優秀な人間を送り込んでおり、そのような企業のトップはだいたい共産党です。また、それとは別のルートでIT企業も大きくなってきました。IT業界で新しい芽が出ると、ある程度大きくなるまで放っておき、大きくなってきたところで、体制に取り込み、共産党の支配下におこうとします。日本のIT関連は米国のGAFAにほとんど支配されていますが、中国にはGAFAと同様のものがすでにあり、たとえば、中国版Twitterを提供して、TwitterとFacebookは使えないようにしています。14億のマーケットがあるため、国内だけを相手に商売できるのです。日本でもドコモの携帯などは、ガラパゴスと言われましたが、中国もある種のガラパゴスです。しかし、ガラパゴス大陸ですから、それなりにやっていけます。

 

米国を脅かす「中国モデル」

このような体制に一番向いているのは、ビッグデータです。ビッグデータとは、人の行動記録など、あらゆる情報を集めて分析し、消費動向などを見ながら予測をしていくものです。たとえば、世界中で自動運転技術の開発が行われていますが、人の行動を細かく解析することで自動運転が可能になります。データの数が多いほど強く、独占できればさらにいいです。このやり方は、大事なプライバシーを政府に勝手に集められては困るという考えの民主主義国家ではなかなかできません。しかし、独裁体制ではどんどんできます。中国はDNAなどの個人情報まで集めています。

中国では、十数年前からマイカードに似たICチップの入った身分証明証を、子ども以外全員持っています。そのおかげでコンピュータでの商売ができるようになりました。30年前の中国では現金商売しかできないと言われていましたが、今は、ICチップの入った身分証明証で紐づけられ、すべて監視されています。新幹線の切符も飛行機と同じように、身分証明証がなければ買えないシステムで、これはテロ対策にも最適です。日本でもIC化が進んではいますが、国としてすべてをIC化することはできません。情報化社会において、中国のような体制は向いており、彼らはこの「中国モデル」に非常に自信をつけています。

「中国モデル」というのは、発展途上国が早く発展するためには、米国ではなく中国を真似したほうがいいよ、というセールスポイントです。米国は民主主義を中心として経済発展するモデルで戦後の国際秩序を築き、日本は民主化によって経済発展に成功しました。米国はそのような流れが続くことを期待しましたが、違う流れになってきています。また、宇宙開発の分野でも、中国は火星に探査機を送ることに成功し、さらに宇宙ステーションの建設を始めています。このままいけば、中国が宇宙ステーションを独占することになるでしょう。科学技術実験などのデータを蓄積するため、協力する国はぜひ一緒に、とアピールしています。このようなセールスポイントが、米中の綱引きの1つになっています。

かつてのソビエトのように、監視社会や独裁体制について、中国の人たちは嫌がっているはずだと思う方もいるでしょう。しかし、今の中国は違います。若者たちは皆、SNSなどで激しく議論し、共産党と自分を一体化させ「強い中国を支えるのは、われわれだ」という考えが増えています。天安門事件のときの若者は「米国のような民主主義を目指す」と言っており、今もそのような考えの人たちはいます。しかし、共産党の悪口を言うと、ネット上で若者に批判され、攻撃のツイートがどんどん寄せられるため、黙っています。

今、共産党体制のなかの経済的自由度はかなり広がり、彼らはお金を手に入れ、世界中に行っています。ソビエトでは、一度出たら戻らない人が多かったのですが、中国の場合は、皆、力を付けて戻ってきます。今の中国は、ナショナリズムなどを上手く使いながら求心力を持っています。習近平は世界では嫌われているかもしれませんが、国内ではそうではないのです。ただやはり、米国に真正面から衝突することはできないでしょう。軍事的な衝突はお互いに避けたいので、経済的にどこまでできるかが課題です。米国は貿易で中国をいじめているようにも見えますが、結局、米国人の買うものは中国が作っており、中国の輸出額は増えています。

日本でも今、油や木材などの物価が上がっていますが、それは中国と米国の需要が高まっているからです。経済が回復してきており、そのおかげで他の国が助かっているという面もあります。米中の関係は今後、決着がつかないまま、ずっと続く気もしますが、米国が警戒心を高めていることは間違いありません。今、中国のGDPは米国の4分の3ほどで、このままいけば2030年ごろには、米国を追い抜きます。仮に抜いても、1人当たりでは抜けませんし、軍事力で追いつくのも難しいでしょう。しかし、米中のバランス関係の行方は、日本の安全保障にも関わってきますから、注目していかなければいけません。

 

中国共産党のしくみ

中国共産党の人事についても見てみましょう。中国共産党は政権政党で、党大会で指導部が変わると政権交代です。党大会は5年に1度開かれ、まず全国から二千数百人の代表を選びます。そこから投票で中央委員を選び、そこからさらに政治局委員を選びます。そこから常務委員を選び、さらにそのトップになる総書記を選ぶというかたちです。下から選んでいるように見えますが、実際には、上から決めていくようなところもあります。これはボリシェヴィキ体制という、ソビエト共産党が作り上げた独裁体制の1つのモデルです。

その5年に1度の党大会が、来年の秋にあります。注目は習近平がもう1期やるだろうということです。習近平の前、鄧小平に指名された江沢民と胡錦涛は、どちらも2期10年ずつやりました。習近平は来年で10年ですから、これまで通りならもう終わるところです。中国では総書記が、国家主席と軍事委員会の主席を兼ねており、かつて、文革で毛沢東に権力が集中したことを踏まえ、権力には制限が必要だと考えた鄧小平が、3選禁止にしましたが、習近平はそのルールをなくしました。今後、世界がどうなるか分からない状況の中で、強力な指導者が必要と考え、任期を延ばしたかったのでしょう。しかし、これはある種の独裁だと言って、米国や日本は「後ろに進んでいる」と強く批判しています。

総書記を除く常務委員6人には68歳定年制という暗黙のルールがあるようで、来年秋、現在の委員6人のうち、2人が68歳以上となって引退し、新しく2人入ると予想されています。総書記の定年は、70歳前後のようで、習近平も3期で終わりだろうと予想されています。そのとき大事なのは、習近平のあとにトップをやれそうな人がいるかどうかです。来年入るメンバーのうち、5年後にもう1期できる人、つまり、62歳以下の人が常務委員会に入れば、その人が有力な後継候補になり得るのです。今のところ、あまり有力な人はいませんが、習近平も党大会直前に二段飛びぐらいして上がってきましたから、実際のところは分かりません。

今いるのは、陳敏爾という重慶市の書記と、共産党の有力な青年組織出身の胡春華と、丁薛祥という習近平の秘書です。中国の場合、あまり近すぎる者を後継者にしないという暗黙の了解があり、鄧小平は秘書をトップにしませんでした。また、縁故政治的なものを嫌がり、毛沢東も鄧小平も世襲はしませんでした。我が子に継がせて潰れる可能性より、優秀な人間をトップにして着実に生き残る道を選ぶことで、9,500万人まで膨らんできた組織なのです。

 

腐敗をなくし、豊かな生活。10年後は・・

鄧小平の改革の当初は、優秀な人間が入らない時期もあり、党員のなかに共産党の権力を利用して金儲けをしようする人間も多くいました。習近平は、そのような腐敗を厳しく取り締まりました。中国の歴史のなかで腐敗の影響は大きく、蔣介石の国民党が潰れた原因の1つも腐敗でした。いずれ共産党も腐敗して潰れると思われましたが、そうなってはいません。また、農村と都市、金持ちとそれ以外の格差が激しく、金持ちの子はいつまでも金持ちで、権力も持ち、金持ちが優遇されるような税制などもありましたが、少しずつ改善されてきています。

中国共産党が続いている一番の理由は、中国人の生活水準が上がり続けてきたことにあると思います。中国共産党が掲げる目標は「人民に、美しく豊かな生活をもたらす」ということであり、裏には経済的な利益を得られるなら、多少の自由がなくても耐えられるだろう、という計算があります。若者の支持が増えているとはいえ、若者は世界に行きたい、ネットでなんでもやりたい、映画もテレビも自由に見たいとも思っているでしょう。いつか、多くの制限に対して反発が始まるかもしれません。また、習近平の10年下の世代は、改革開放のあとに育った、豊かになってきた時代の人たちです。その世代のトップともなれば、米国に留学経験があり、活躍している人も多くいます。彼らが10年後の指導部になるとすれば、今とは違う中国になるかもしれないと、若干の期待もあります。

 

中国の強み

日本は、外からきたルールでも、すんなり受け入れるようなところがありますが、中国は「人が作ったルールは守りたくない、新しくルールを作ろう」という考えが強いです。WTOに入ったときも「中国がルールを守るようになれば、日本にもプラスになる」と考える人たちがいましたが、中国はWTOの既存のルールを守るつもりはなく、自分たちに不利なルールを変えようとしました。これは、日本人にはなかなか分かりづらい発想かもしれませんが、彼らにはそれだけの力があるのかもしれません。

中国の強みは、多くの途上国と利害が一致していることです。たとえば、中国とインドはいろいろな経済的利益や気候変動のパターンなどが同じで「先進国の排ガスで悪化した環境のために、なぜ、われわれが同じルールを守らなければいけないのか。自分たちの残したものを押し付けるな」という意識があります。また、小さい国が言えないことを、大声で言ってくれるという面もあり、実は、国連の中には中国を擁護する国が多く、先進国が中国を批判しても、その倍ぐらいの国が中国を擁護します。

つまり、中国は日本で見ているほど、世界の中で孤立していません。先進国とは対立して浮いているように見えますが、アフリカや東南アジアを入れて見ると、結構いい勝負であり、なかなか難儀な人たちなのです。

 

質疑応答

男性A「中国のウィークポイントは何ですか?」
坂東氏少子高齢化です。一人っ子政策の影響がかなり残っています。3人までOKにしましたが、1人を育てるためのシステムがすでにできあがっているため、増やすのは難しいのです。都会では子育てより自分の人生を楽しみたい人も増えています。また、軍事大国ですが、一人っ子を戦争で死なせたい親はいませんので、簡単に戦争をするような政権は支持しないでしょう。そういうところでブレーキがかかると思います」

男性A「中進国の罠は、どれくらい中国社会に影響を与えるでしょうか?」
坂東氏「それを解く鍵の1つはイノベーションです。彼らは今、国産の先端技術をどんどん作ろうとしています。ファーウェイやTikTokなども出始め、アリババが東南アジアに進出するなど、国際的な競争力を持ちつつある状況です。また、国産製品の質が上がり、国際的な景気に影響されずにやっていけるようになりました。さらに妙なナショナリズムがあり、ファーウェイが国外で叩かれれば、皆でファーウェイを買おうなどとなります。中進国の罠を超え始めてきていますから、米国は本気になってきていると思います」


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開催スケジュール SCHEDULE

日韓関係の改善は本物なのか

2024年5月18日 開催

日韓関係の改善は本物なのか

日時
2024年5月18日[開始時刻]15:00[開始時刻]14:30
会場
毎日江﨑ビル9F 江﨑ホール
WEB配信
WEB配信あり

2024年カリキュラム CURRICULUM

タイトル 講師

01/13新春!日本の政治展望前田浩智 氏

02/24ロシアはどこへ行くのか大木俊治 氏

03/013月は休講となります。 
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04/06現地で6年半暮らした元エルサレム特派員が語るイスラエル・パレスチナ紛争の本質大治朋子 氏

05/18日韓関係の改善は本物なのか澤田克己 氏

06/15宗教と政治を追う坂口裕彦 氏

タイトル 講師

07/13パリ五輪みどころ講座!岩壁峻 氏

08/10特攻と日本人栗原俊雄 氏

09/21日本の教育問題澤圭一郎 氏

10/26毎年恒例!数独の世界【数独協会】森西亨太 氏 / 後藤好文 氏

11/16米国大統領選後の日本と世界及川正也 氏

12/21SDGs最前線永山悦子 氏