森西亨太 氏・後藤 好文

数独の世界

森西亨太 氏・後藤 好文 氏

数独世界チャンピオン・数独協会 理事

独世界チャンピオン 森西亨太 氏
奈良県出身。31歳会社員。中学生の時にパズル雑誌を見たのをきっかけに、数独を解くようになった。2010年の世界数独選手権の個人戦に初出場で25位。その後、同選手権において2011年から3年連続で準優勝、2014、2015、2017、2018年に優勝を飾るなど、国内外の数独大会で活躍している。

日本数独協会 代表理事 後藤好文氏
1951年東京に生まれる。北海道大学文学部インド哲学科中退。フィリピン、香港、台湾などの海外勤務を経て、1999年帰国。(株)ニコリ社入社。2011年副社長に就任し、2017年に退職。2015年一般社団法人日本数独協会を設立。2018年代表理事に就任。現在に至る。

時間や変種問題との戦い、世界数独選手権。

――森西亨太氏――

 私は現在30歳、2001年の中学1年生の頃に数独を始め、世界数独選手権には2010年から今年まで10年連続で出場しています。成績は2011年からすべて3位以内、そのうち4回、優勝できました。

 選手権では、制限時間内に何問解けたかを競います。問題ごとに難易度が違うため、解いたときの得点も異なり、また早く解けた人は余った時間分がボーナス点に。
 数独は81マスありますが、80マス正解で1マス間違えただけでも不正解で点数をもらえない厳しさがあります。スケジュールも丸2日、朝9時から夜6時ぐらいまでと、結構ハードです。
 世界大会だからといって難問ばかりではなく、新聞や雑誌が出題する程度の問題もありますが、問題の量が多いため時間が足りない。また、一般的な数独にはないルールや制約を加えた変種問題も多く、それぞれのルールや制約を覚えるのが大変です。
 出場できるのは各国4名。この4名が個人戦の他にチームを組んで団体戦を戦います。ただし4人では少ないという意見が出て、現在は4名以外にも非公式ですが選手派遣できるようになりました。日本は予選を勝ち抜いた上位8名を派遣しています。

誰もが参加できる国内予選、ぜひ挑戦を。

 日本の予選は大会ホームページを使います。サイト内に問題が入ったPDFファイルがあり、大会開始時刻にそれを開けるパスワードが公開されます。制限時間内に問題を解けるだけ解き、ホームページの解答フォームから送って採点してもらう仕組みです。
 ちなみに今年の国内予選の制限時間は2時間。世界大会の参加選手を決める予選ですから内容は厳しく、制限時間もあって、上位の人でも問題の半分ぐらいしか正解できません。

 参加を希望する人は、日本パズル連盟のホームページで確認してください。大会参加費は無料。インターネット環境やパソコン、プリンタ、筆記用具があれば誰でも参加できます。これまでの出題例もサイトに出ていて、その1問だけ解けるレベルでも参加可能ですから、ぜひトライしてください。参加人数が増えて盛り上がることを願っています。

今年の世界数独選手権は、個人も団体も日本が優勝。

 第1回の世界数独選手権は数独ブームが世界的に広がった2006年に始まり、以来毎年行われ、今年、2019年には14回目を迎えました。1992年スタートの「世界パズル選手権」からのノレン分けですが、今は両大会とも同じ会場で開催、それぞれ2、3日かかるため私のように両方に出る人は1週間ほど会場に缶詰になる感じです。

 開催国は毎年違います。今年はドイツのキルヒハイムという街でした。ホテルを貸し切り、広い会場に並ぶ机に問題用紙が配られます。前方には残り時間を表示するスクリーンがあります。来年は中国の上海で開催する予定です。
(写真を見ながら)
 これは表彰式の写真です。左が個人戦。右が今年個人2位で、3連覇を逃した私。中央に立っているのが私から優勝を奪った遠藤憲さんです。個人戦では競い合いますが、団体では日本チームで一緒にやってきた、とても心強いメンバーです。もちろんメンバーの皆が心強くて団体戦は優勝できました。

練習ポイントは、手筋をさがす、
早さを意識、変種に挑む、そして意欲。

 数独を始めた中高生の頃は世界選手権に出たいわけでもなく、適当に雑誌や新聞の問題を解いて遊んでいました。それが一番楽しくて精神的にはいいですね。数独ばっかりやって勉強せず、親に怒られたものです。
 本によっては盤面外に書かれた数字を、使うごとにチェックできるようになっていて、律義に全部使ってゆっくり解いていました。今はチェックが面倒で使っていません。

 大学生になって20歳すぎに世界選手権の門を一度叩いたら、もっと解けるようになりたい、強くなりたいと意欲が高まり、解き方を本格的に考えました。
 難問は難しい手筋が入っているため本当に難しく、その手筋を探すのがひとつのポイント。また、少しでも早く最後の81マス目まで埋めないとスピードが身に付かないし、数を解けないため、早さと正確さを意識しました。

 変種の練習も必要ですが、日本ではその手の本が少なくAmazonを利用して海外から取り寄せています。sudokuとローマ字で検索すると、海外の数独本が出てきます。日本の数独だけで飽き足らない人や変種にトライしたい人は、手を伸ばしてみてください。
 また、自分がどの難易度まで解けるかを把握し、それを超えたいという意欲も大切。解けないときは、それでも粘り、どうしても無理なら人から教えてもらうのもいいと思います。ただし、単に見落としているだけの場合もありますし、焦らず自分のペースでやってください。

1問1問が完結ではなく、
問題が連鎖している世界選手権<団体戦>。

 今年の世界選手権で使われた問題の雰囲気を紹介します。著作権の関係でお見せできませんが、気になる人は世界パズル連盟「World Puzzle Federation」のサイトでご覧ください。英語のサイトです。

 最初は、普通のルールの数独が9問ある25分のラウンドでした。難易度はニコリさんだと「お手頃」から「大変」ぐらい。新聞だと中級上級が混じっているくらいです。世界大会で一番速い選手は20分かからずに解いていました。

 団体戦では、数独とは思えないような見た目のものが印刷された模造紙大のシートを、チームごとに渡され、それを解きます。
 楕円状に並んだ四角ひとつが数独1問。それが16個繋がって16問というラウンドもあります。普通は1問1問が完結していますが、16問が連鎖しているため、ひとつ間違えると隣も違うかもしれない。すごいプレッシャーがかかります。そもそも連鎖を利用しないと解けないようになっています。
 こちらも団体戦のシートです。トロフィーのオブジェの中央付近に数独のマス目があり、これを埋めて問題を解き、トロフィーの形に組み立てていくと数独が解けるようになっています。

 この団体戦の写真は様子が変ですよね。解く問題のトロフィーのオブジェがひとつなのに対してチームは4人だから、私はこっちを見たい、もうひとりは反対側を見たい、そのため数独を解いていると思えない構図の写真になっていますが、こんなふうに普段の数独にはない仕掛けや体験を味わうことができるのも楽しみです。
 サイトに行って問題だけでも見てもらえたら嬉しいです。

言語も、老若男女も問わず楽しめるのが数独の魅力。

――後藤好文氏――

 一般社団法人日本数独協会の後藤と申します。森西さんが参加されている数独世界選手権の日本予選を行っている団体は「日本パズル連盟」という団体で、数独の早解きや難問に挑戦する、いわゆる競技数独を推進しているところです。私たちの日本数独協会は、数独の楽しさを分かち合ったり、解き方を一緒に考えたりするという、緩い団体です。

 ニコリという出版社の社長、鍛冶真起氏が「数字は独身に限る」と命名し、その後、略されて「数独」と呼ばれるようになったパズルは、1984年に日本に登場し、日本ではブームになりましたが、世界での認知度は低いままでした。
 2004年にイギリスのThe Times紙に問題が掲載されて火が点き、ロンドンで大ブームになります。朝の職場の挨拶が「今日の数独解けた?」。さらに本が出版され、数独に夢中のご主人が奥様の話を聞かないため「Sudoku Widow」、数独未亡人なんて言葉ができたほどです。

 このブームがイギリス全土からアメリカへ広がり世界中が大ブームになりました。このときに「Sudoku」って何?と世界で疑問が生じ、どうもジャパニーズパズルらしいと、ニコリに問い合わせが殺到しました。
 当時ニコリに勤務していた私は、この頃から各国に呼ばれて取材を受けながら世界中を回りました。そのときに思ったことがあります。当たり前ですが「このパズルに言葉はいらない、数字だけ」。どんな言語の人でも、小さなお子さんから年配まで、一緒に遊べる素晴らしさを実感したのです。

東日本大震災の被災地で盛り上がり、
認定試験もスタート。

 将棋や囲碁のように数独も協会を作ろうと、2015年に日本数独協会を設立しました。しかし作ったはいいけど何をしよう?日本パズル連盟さんのように競技性を追求するでもないし、私自身、数独が得意なわけではない。
 ここでありがたかったのは数独ファンです。数独を教えるのが好きな皆さんが大勢いて、会員となってボランティアで全国に数独を広めてくださったのです。
 京都をベースに全国で数独お茶会を開いて普及に努めてくれている、自称「数独親善大使」の藤川美帆さんが、今日は静岡に来ており、この後「数独お茶会」を開催するそうです。藤川さんをご紹介します。

 協会でもイベントや数独教室を開催しております。学校に要請されて子どもたちに教えに行くこともあります。
 東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県の大槌町では、仮設住宅で数独が盛り上がり、数独の認定試験をやってほしいと要請が出たため、2017年9月に大槌町中央公民館を借りて第1回数独技能認定試験を実施しました。
 参加者は大槌町の他に県外からの人もいて約150名。試験の実施を知っても大槌町まで行けない人たちの要望を受けて、自宅試験もやりました。ご自宅に問題用紙を送付。時間内に問題を解いたものを協会に送り返してもらい、私たちが採点。1級や2級などを認定し、認定証を送りました。
 5回目を迎える今年より数独実力テストと名称を変えて実施しますので、皆さんもぜひ参加してください。

力を高めるテクニックのカギは「予約」。

 今日ご来場の方々は、毎日新聞で数独を解いているレベルという前提で、少し技術的なお話をしましょう。
 数独にはテクニックがあります。自己流でも解けなくもないのですが、難しい問題に手も足も出ないことがあり、そんなときにはしっかりしたテクニックを身に付けると解けるようになります。

 ちょうど初級から中級に移るときに必要なのが「予約」というテクニックです。お配りした資料の「数独中級講座 予約の見つけ方」をご覧ください。
 これは解く問題ではなく説明のためのものです。左の盤面の左上のブロックの中に星印が2つあります。この星印のマスに、1か2のどちらかが、必ず入ります。お分かりでしょうか。このような状態を「1と2で予約した」と言います。
 どっちが1でどっちが2かと、この段階で決めたい人がいますが、決める必要はありません。また、一度置いた数字を動かしたくない、という人もよくいますが、ここでお話ししたいのは、数独は頭を柔らかくすることが大切、ということ。

 柔らかさに関連して、数独が頭に有効な3点をお話します。ひとつは、こうなって、こうなるから、ここは5だ、と論理的な思考が身に付くこと。次に柔軟性。論理的に考えてもダメなとき、別の場所から攻める、あるいはパッと閉じて寝てしまうような柔軟性です。3番目にひらめき。寝て翌日起きて見ると「あ、ここに3が入る」とひらめくことがあります。
 このとき、皆さんの脳の中で血流が巡り、一緒に新しい酸素が入って来る。すると脳がフレッシュになり、いつまでも若々しい。つまり柔軟に向き合って、ひらめいて驚く。それが数独の良さです。

 話は逸れましたが、「予約」は初級の終わりから上級まで使えます。左上のブロックで1、2の予約が決まったら、この資料の場合は5に注目。8Aと6Bに5があります。1、2の予約があるから、5が入るのは1Cと決めることができます。

 今度は資料の一番下の横列を見てください。一番左のブロックに1、2、4、6とあります。つまり6Iか9Iに1、2を予約できます。これは列で見る予約です。さっきはブロックで見る予約でした。
 横列1、2が決まったら、2Hの6に注目。1、2を予約したから、6は4Iにしか来ません。予約の成果で、6が決まりました。このように予約を使って難問にもトライしてみてください。
 テクニックはこの他にも、上級の「井桁の理論」や、インターネットを見るとXY-wingやJellyfishなど、様々な解き技が紹介されています。

作家の個性が出る手作りの数独問題には、
向き合う楽しみがある

――森西亨太氏――

 「予約は必ず書いた方がいいか、記憶しておくだけではダメか」という会場の質問にお答えします。世界大会に参加している100人中100人が多分書いています。書けば他の数字が入らないことがひと目で分かるからです。小さな数字で書いておき、確定した数字を大きく書きます。予約の数字はルール上、消さなくてもOKです。ただし、確定数字を大きくしっかり書かないと不正解になります。そこさえ気をつければ予約は書いた方がわかりやすいので、ぜひ書いてほしいと思います。


――後藤好文氏――

 数独を楽しんだり練習したりするのに役立つ本はたくさん売られています。ただしコンピューターのプログラムで作った問題は、パターン化するというか、最初から最後まで似たタイプの問題が多くなりがちです。また、プログラマーのレベルで問題のレベルが決まってしまう。逆に作者が1問1問手作りして作った問題は、作家の個性が出て、バラエティーに富んだ数独と向き合えます。数独を解きながら作家と会話をするような楽しさもあります。